皆さんこんにちは、
この会は私の母校であります、神奈川歯科大学の先生方が中心になり、年4回ほどセミナーを開催している、とても私にとって有意義な研究会です。
今回は「矯正治療のスタンダート」というテーマで、活発な討論や、臨床をたくさんこなされている先生のためになるセミナーがありました。
その中でも特に私がおもしろかったのは、午前中のグループ討論です。
これは課題症例を3組のグループに分かれて討論しながら診断を行い、治療計画を立案し、それを各グループの代表がみんなの前で発表し、さらにそれを討論していくというものです。
まず面白かったのはグループの分け方です。
効率的な討論をするために、心理テストをおこない、自分の一番当てはまる性格を次の4タイプの中から見つけます。
1)コントローラー:グループのリーダー、皆の先頭に立ち、引っ張っていくタイプの人。
2)プロモーター:皆が話したことをすばやく判断し詳しく分析することで、それらをうまくまとめていける人。
3)サポーター:皆に気配りが出来る人。皆の話をうまくサポートできる人。
4)アナライザー:皆でまとめた結果が本当に正しいか、客観的に、また公平に分析が出来る人。
この4タイプです。
心理テストで、それぞれのタイプで自分が何点かが出ますので、そこで出た点数の一番高い点数を取ったタイプが自分のタイプなのですが、私はまったく同じ点数で、「プロモーター」と「サポーター」タイプでした。
また参加者の中で、一番多かったのは「アナライザー」タイプで、15人中10人はそのタイプでした。
逆に一番少なかったのは「コントローラー」タイプで、1人しかいなく、これは日本人では典型的に少ないそうです。
これらの4タイプに分かれた参加者を、うまく3グループに分け、いよいよグループ内の討論の始まりです。
症例は大人の女性の方で、一見するとそれほど難しくなく、よくある一般的なケースでした。ところが驚くことに、それほど難しくないケースだからこそ余計にグループ内で結論が分かれました。
細かくは書きませんが、要はその方の永久歯を抜歯して治すのか、抜かないで治すのか、その決定的なところで、5人が3対2に分かれました。
結局うちのグループはこの症例を抜歯して治すという診断になり、その後治療計画などをたてて代表者の発表会に挑みました。
まず私がトップバッターとしてグループの代表発表をおこないましたが、ここでも3グループの診断および治療計画がわかれました。
実際にその症例を3通りに分けて治療するわけにはいきませんから、当然答えは出ませんが、正直、ここまで診断が分かれるとは思っていませんでした。
一般的に神奈川歯科大学の矯正歯科は、歯を抜かないで治療することで有名なのですが、今回は他の大学出身の先生もいらっしゃった中でのこの結果ですので、改めて審美的な感覚や治療のメカニクス、そしてドクターの意識の違いによって診断が変わってくるんだなと思いました。
変に勘違いされてもいけませんので補足しますと、おそらくこのケースは歯を抜いても抜かなくてもどちらでも治ります。
ただ、どちらがより良い仕上がりなのか、どちらが将来安定するのか、そして一番は、どちらが患者さんの要求により答えているのかによって、診断が変わってくるのです。
今回は本当の患者さんではありませんから、当人の意思は聞けませんので、余計に診断が割れたのだと思います。
このような結果が出て、改めて「矯正のスタンダート」ってなんだろうと考えさせられました。
患者さんによってスタンダートは変わってくるのだと思います。
ちなみに私の最終的な診断の基準はうちの子供たちです。
もしうちの子供だったらどう治療するのがこの子にとって楽なのか、また大げさに言えば、どのような仕上がりが将来この子が幸せになれるのか、、、
そんなことを考えつつ診断を考えています。